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「ジェット・リーのFearless:ジェット・リーとのインタビュー」
ウイルソン・モラレス

Q:どのようなきっかけでこの映画をとることになったのですか。

J:この作品はずいぶん前から作られていたんだ。後にブルース・リーのアクション映画を見るようになったけど、その中に霍元甲とその弟子達の物語のものがあった。10年前、精武英雄という、やはり霍元甲とその弟子達の作品を撮った。それで僕はいつも霍元甲の映画をいつか撮ろうと思っていたんだ。でも2003年に中国での残念なニュースを聞くまでは実際に作ろうとはしていなかったんだ。それは、1年に25万人もの自殺者が出たということだった。それに、霍元甲は僕にとても近い人物だという気がするんだ。彼の信念や哲学を僕も持っている。武術は僕の人生そのものだし。僕が知っているすべてのことは武術哲学から得たものだ。だからその哲学を語る作品を作ろうと思っていたんだ。たくさんのアクション映画があるけれど、普通は戦い、肉体的な戦いや暴力に対抗する暴力に焦点を置いている。アクション映画から受け取るものはそれだけだ-ただ殴る、殴る、殴るだけ。僕は中国語の言葉、武術は、戦争を止めることを意味すると思っている。多くの人が戦争や戦いだけを語るけど、だれもそれを止める話をしない。僕は霍元甲が哲学を、肉体的、精神的な面から語る余地のある映画を撮りたかったんだ。

Q:武術を学ぶ人は、その本質を理解するものだと思いますか。精神的な鍛錬であり、精神の平和のためであるということを。

J:それは様々な武術を学ぶ集団次第だと思う。僕のように、最初の2,3年は肉体的な面しか理解していない。どう肉体的に動くのかだけを学んでいる。でもしばらくすると、人生を考え、なぜ男は女に不満を持ち、女はなぜ男に不満を持つのか、なんて考え出す。不満をいうべきではなく、教えるべきなんだ。陰陽の考え方だよ。僕は常に両方の見方をするが、人はそれぞれその人なりの意見がある。それが争いのもとなんだ。そこから学ぶ必要がある。多くの指導者はそのことを教えているよ。多くの人が武術を学んでいる。銃自体は良くも悪くもない。それは誰が使うかに左右されることだ。武術を学ぶ人にとって、まず第一に、なぜ武術を学ぶ必要があるのか、という教えが大切だ。

Q:武術が一切でてこない映画を作りたいと語っておられましたが。

J:以前にお話したのは、暴力が唯一の解決策ではないということです。それをどうやって示すかはどの角度から人生を見るかです。

Q:武術から離れるということですが、どれくらい次の作品では離れるのですか。いくつかの映画制作をお考えのようですが。

J:Fearlessは僕に、過去や肉体面、精神面、すべてについての僕の信念を語る余地を与えてくれた。だから、これが僕にとって最後の武術作品なんだ。まだこの先、ROGUEのような映画を撮る予定だよ。FBIやマフィアが出てきて、お互いに殴り合うアクションがあって、これは中国なのかアメリカなのか日本なのかよく分からないんだけどね。人間に手が二本、足が二本あって、肉体的にお互いに殴り合ってストーリーを語れば、そこに哲学はない。ただ戦いだけだ。

Q:恋愛ものの可能性はあるのですか。

J:恋愛もの?僕自身が知りたいね。どの映画会社もそんな役を提供してくれないから。アクション無しの映画をとることが出来るということを、映画会社に示すチャンスが、一度もなかったんだ。

Q:やってみたいですか。

J:どんな俳優も変化を求めている。どんな俳優でもやりたいと思うよ。でも映画産業では、だれもそんな機会をくれないね。

Q:ご自身で作らなければ?

J:そうだね。自分で作るしかない。

Q:今までの俳優として人生の中で、ご自分の技量を存分に示しながらも、武術の真の目的を実現できない時がありましたか。Fearlessの中では、あなたが演じる役はただ戦いを望み、それ以上のものがあることに気づいていませんでしたね。

J:だからこの作品を撮ったんだ。僕は中国では5年連続チャンピオンだった。僕は全力を尽くさなければならなかったし、何度もそれを示さなければならなかった。でも、僕は何も言わなかった。一本の映画を撮り、アジアで有名になるまでは。すると、たくさんの人が押し掛け、金儲けをしたがり、僕をわがままにしようとするんだ。自己が肥大するんだけど、それが普通のなりゆきなんだ。それをどうコントロールするか分かっていないと、負ける。間違いを犯すんだ。親やコーチの言うことを聞かなくなってね。これがやりたい、あれがやりたいってね。僕が自分の感情を作品に持ち込んだのはそこなんだ。そしてもちろん、映画では大げさに描いてあるが、最悪の事態は霍元甲が死ぬことだ。

Q:トニー・ジャーについてどう思いますか。彼は「マッハ!」や「トム・ヤム・クン」に登場する新人武術家です。

J:彼はとてもいいよ。数年前に友人のリュック・ベッソンが電話してきて、彼の映画を見てみろというんだ。僕の家のホームシアターで見てみた。彼はとてもよかったよ。うれしく思う。このジャンルには、いつの時代も新しい人材が必要だ。すばらしいと思うよ。

Q:FearlessやHEROなど、あなたの最近の作品はとてもドラマチックです。より良い脚本を探しているのですか。

J:それは以前にも言ったように、何か今までと違うことをするとき、映画会社にHEROやダニー・ザ・ドッグなどで証明しなくてはならない。だれも自分の信念を語る映画を作ってはくれない。皆、暴力に焦点を置きたいんだ。ダニー・ザ・ドッグでは、僕は犬のような役をやった。感情も無く、ただ戦わされるだけの人物だ。映画の終わりには、モーガン・フリーマンが彼を人間らしく戻してくれる。僕は、暴力だけが解決策ではないということを示す、もっと深い角度から映画を作りたかったんだ。

Q:今回の作品はカットされたところもあるとのことですが、ラブシーンはないのですか。

J:いや、ないよ。中国の文化とアメリカの文化は違うんだ。アメリカ人は映画に愛と暖かさを求めるけれど、中国人はそうじゃない。

Q:あなたとジャッキー・チェンが映画で共演するというウワサは本当ですか。

J:もう15年もの間、いつもウワサだったけど、やっと今度は本当だよ!来年の4月、僕たちは映画を撮るよ。みんな、プロデューサーと監督が発表されるのをまっているんだ。

Q:少し話していただけませんか。

J:ぬけがけはダメなんだ。制作者側が発表することだからね。

Q:中国での映画事情についてお話しいただけますか。

J:中国では、スケジュールや制作費やすべてコントロールできる。今回の作品も、90日間撮影したけど、そのうちの60日はアクションシーンに費やした。アメリカでは、ロミオマストダイやブラックダイアモンドなど、プロデューサーには恵まれたけど、アクションシーンには4日しかかけられなかった。迫力あるアクションシーンをとりたければ、時間がかかるんだ。

Q:今までに、あなたがこれほどたくさんの武器を使うのを見たことがありません。これはあなたが今までずっと鍛錬してこられたものですね。この作品での武器を使ってのアクションについてお話いただけますか。

J:ずいぶん前、ユエン・ウーピンと話していて、18種類の武器を使う映画を撮りたいと話したことがある。1つの映画の中ですべてを見せたかったんだ。とってもかっこいいと思ったよ。今回の作品では、僕は3,4種類の武器しか使っていない。

Q:あなたご自身の出演はない作品を作ってみたいとか、映画以外で何か興味のあることを始めたいと考えたことはありますか。

J:僕はいつも映画を自分の人生の一部だと思っている。中国で基金を始めたんだ。1千万人の人がうつ状態にある。だから僕は自分の人生経験を生かして何かする必要があると感じているんだ。お金を作って、世界中から医者を見つけて対処法を伝えたい。今はそれに多くの時間を使っているんだ。

Q:今回の作品はあまり編集された場面が多くありませんが、編集されていない最も長い場面はどこですか。

J:僕の記憶では、ノンストップで17種類の動きをやった場面があるよ。

Q:カットされたシーンはありましたか。

J:ディレクターズカット版は2時間30分あるよ。

Q:ミッシェル・ヨーは出ていませんでしたか。

J:確かに、彼女は出ていたよ。武術は戦いを止めるという意味を説明しなくちゃいけないが、映画の冒頭で、2008年の北京オリンピック競技としてのニュースが出てくる。レポーターが、なぜ武術なのかと尋ねるんだ。なぜならば、武術は多くのアクション映画で使われ、相手を倒したくさんの血が流される。なぜそれがスポーツなんだ、と問いかけるんだ。ミッシェル・ヨーは武術を紹介し、武術は今では変わってしまったと話す。100年前、武術をスポーツにした達人がいた。

Q:この作品が他の監督達に、将来武術映画をどう撮ればいいのかを示すと思いますか。

J:僕はいつも最善を尽くすことを信じているよ。

(原文はこちら)http://www.blackfilm.com/20060908/features/jetli.shtml

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