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kungfumagazine.comにSPIRITのインタビュー記事がありました。
http://ezine.kungfumagazine.com/magazine/article.php?article=670

ジェット・リーの「SPIRIT」(記事:ジーン・チン)

武術に関しては、ジェット・リーのような人物は他にいない。アメリカ人の多くは彼を単にアクションスターの一人としてしか知らないが、リーの生い立ちは傑出したものだ。(経歴略)ジェットは、世界で最も人口の多いこの国の出身者の中で国際的にも認められた唯一のスターである。《ブルース・リーやジャッキー・チェンは英国領時代の香港出身である》(再び経歴略)ジェットは彼が最も得意とする分野の作品を携えて帰ってきた。「SPIRIT」は武術史劇で、その後の中国に強い影響を与えた歴史上の人物、霍元甲の物語である。私達は上海でジェット・リーのインタビューを行うことができた。彼の声は、数限りないインタビューの後でかれていた。

Q:「SPIRIT」はあなたの最後の武術作品ということですが、ROGUEを撮っているそうですね。これは武術作品ではないのですか。

A: 僕が思うに武術には二つの面があります。普通、肉体的側面を語る時には、外家拳、内家拳の二つがありますが、両方とも肉体的なものです。武術家というのは精神面の問題です。武術を通して、良い人間になる方法を学ぶのです。

アクション映画がたくさんあるけど、そこでは肉体的な面しか扱われていません。どんなアクション映画もありえるし、ストーリーに武術を使うこともできます。でもそのストーリーは、どうやって良い人間になるのかを語ってはいません。そこに武術家であることとの大きな違いがあると思います。「SPIRIT」はそれをとても深く掘り下げています。武術の学び方、武術を学ぶ理由、武術の使い方、武術家になるにはどうしたらいいのか。こんなことを語る映画はそんなにたくさんはないでしょう。

Q:あなたにとって、武術作品は道徳的な規範があるべきものですか。そうでなければただのアクション作品というわけですか。

A: そうです。その通りです。肉体的な面だけではありません。香港でもたくさんのアクション映画がありますが、普通は、武術の肉体的な面のみをラブストーリーやその他のストーリーで使っています。私が言いたいことは全て今回の作品の中にあります。今までは、哲学的にここまで深くは考えていなかったのです。

Q:あなたは霍元甲とご自分をとても近しく感じていらっしゃるそうですが、それは何故ですか。

A: 僕の生い立ちを知っているでしょう。8才で武術を習い始めた時、僕は武術をなぜ習うのか分からなかったのです。学び始めると、コーチやみんなが僕に最善をつくせ、というのです。チャンピオンになれ、と。10代の頃の僕の目標はそれのみでした。そして5回連続チャンピオンになり、とても幸せでした。それから映画に出るようになって、僕は有名になりました。心の奥底で自分中心になっていたのです。だれよりも自分が優れていると、言葉にしなくても心に思うようになっていたのです。自分はとても優れている、何をやってもうまくいく、と。それは爆弾を抱えて生きていくことなのです。自分の仕事があるときどん底に落ちます。それで初めて人生を理解するのです。すべては映画のようだと分かるのです。よい監督や共演者、よいアクション監督と共に働くことが大事なのです。そして自分は単なる花だと気づくのです。花を美しく咲かせるにはたくさんの葉が必要です。一人では素晴らしい映画は作れません。失敗を通して、多くのことを理解するのです。失敗を通して、人生を理解する次のステップに進めるのです。

事実のみに目を向けていれば、霍元甲だけに焦点をあてることになるでしょう。彼は精武体育会を創設し、それから亡くなりました。この作品の物語はフィクションですが、すぐに私は、これは一人間の物語だと思いました。現在でも、多くの若いアクションスターや俳優達が、若くして成功を収め、自己中心的になり、通りを歩きみんなに食事をおごり、自分の力を誇示します。そんな様子が100年前といわないまでも今も見られます。生きていく中でそんな人格を見ることがあります。

Q:霍元甲を選ぶことで、あなたはだれよりも歴史的な伝説的武術家を描きました。しかし中国の長い歴史の中ではまだ他にもそのような人物が必ずいると思いますが、他に演じてみたい役はありますか。

A: 張三豊、方世玉、黄飛鴻などの作品をたくさん撮りましたが、「SPIRIT」は最も深い哲学をもった作品だと思います。どの武術作品が一番なのか、この作品の中で僕は答えを出しました。武術を学ぶことや、どう使うべきか、復讐や、用途、全てについてです。将来的にやってみたい役は特にはありません。いま撮りたいのは、Monk In New Yorkです。もう9年も構想を温めていますが、作るチャンスがまだないのです。

Q:進捗状況はどうですか。

A: もうWang Wingという素晴らしい監督は見つけているんです。脚本も書いてもらいます。でもどの映画会社も今のところ撮りたがらないので、支援してくれる人を見つける必要があるんです。映画会社は暴力的な作品を撮りたがっています。お金儲けがしたいんですね。

Q:みんなあなたが戦うところを見たいのです。それについてはどう思いますか。

A: それはかまわないですよ。ビジネスですから。観客だけの意見ではなく、映画会社の意向だということは理解しています。会社は株主や市場に対して、お金を儲ける責任がありますから。それは分かりますよ。会社のために利益を出さなければなりません。だから僕は商業的な映画に出続けるんです。でも同時に、僕自身が撮りたい映画を撮るための余地を見つけようとしています。儲からない映画になったとしてもね。(笑)まあ、どうなるかはわかりませんよ。

Q:アジアでは誰もがあなたを知っていますが、アメリカでは数少ないアジア系有名人の一人です。それについてはどう感じていますか。

A: それは僕が感じていることではなく、観客が感じていることです。観客は気に入れば支持してくれます。でもこれからもずっと支持してくれるという意味ではありません。だから僕の哲学は、過去はすぎさったこと、未来はまだ来ない、です。1つ1つの映画に僕は最善を尽くすだけです。それだけですね。

いつかこんな日が来るでしょう。「ジェット・リーは年を取りすぎたね。もう好きじゃない。」と。それは事実だから僕は極めて幸せです。喜んで家庭に戻り、本当にやりたいことをするでしょう。「人生はゲームのようなもの」ということを僕は理解しています。スタローンやシュワルツネッガーのようなアクションスターもいつか年をとります。そして自動的に家に戻っていくのです。大統領でも、4年、8年と過ぎれば家庭に戻っていきます。それが現実です。とても公平なことです。そして僕が最善を尽くし、観客が僕を支持してくれれば、僕はうれしいです。そうでなければ、僕はわきまえています。過去において観客はずっと僕を支持してくれ、感謝しています。俳優という役割が終われば、僕は他のことをします。

Q:アメリカであなたは変わりましたか。

A: もちろん!僕が子供の頃、大人がアメリカについて語るのを聞きました。いいことや悪いこと両方です。しかし、実際に1974年に行ってみると、違うことが分かりました。それで11才の時に深く考えるようになったのです。僕には自分自身で見ることが必要だったのです。親や先生達の話を聞く必要はありません。彼らは自分たちが信じていることを僕に語ったのです。僕が見た真実は違っていました。アメリカが100%悪くて、中国が100%良い、ということはありえません。10代の頃、僕はもうすでに、どの国にもよいところと悪いところがある、と知っていました。悪い警官もいい警官もいるんです。中国の若者達とは違うものの見方でした。10代の若者達は、中国は素晴らしい歴史を持つ最高の国だ、と言われていました。アメリカ人はアメリカが最高で、最も自由な国だと信じています。他の国に自由を得る方法を教えたいと思っています。僕はこれは違うと思っています。文化の違いや陰陽感覚の問題なのです。強い意見を持っているならば、陰を見ることと陽を見ることは別のことです。僕は多くのことを学びましたよ、もちろん!

Q:アメリカでは映画製作上でどのような影響をうけましたか。

A: ハリウッドではだれもが大きな夢を持っています。ハリウッドで仕事をすると、そこでの仕事の仕組みが分かります。だれが決定権を持っているのか、映画製作のゴーサインを出すのはだれか、監督はだれか、次はだれか。仕組みが分かります。どう立ち回ればよいか。3年いれば、アメリカでの仕事の仕方、振る舞い方が分かります。アジアでは違います。2人、3人が一つアイディアを持てばすぐに制作に取りかかります。上手くいくかもしれないし、そうでないかもしれません。仕事の規模は小さいのです。それが国際規模の会社になれば、たくさんのことを考えなくてはなりません。香港の映画製作は家族的です。一人、二人の小さい家族、小さい会社なのです。彼らが「やるぞ」と言ってお金が出来ればとりかかります。よい面もあります。異なった活力や方法があります。「SPIRIT」のような作品は、アメリカでは作ることはできません。中国語の作品を作る会社を見つけることが出来ません。でもアジアではできます。

Q:競技的武術の新しいルールを考慮すると、あなたの優勝記録を破る人物が出ると思いますか。

A: よくわかりませんね。中国にはたくさんの武術家がいます。彼らは過去20~30年間武術を学び、訓練し実践しています。実際は、武術に優れていて同時に映画俳優としても活躍できる若手が出ていません。みんなそのことを心配しています。みんな若いジェット・リーやジャッキー・チェンなど若手を見つけようとしています。でも僕は、それを決めるのは観客だと思っています。観客が本当のボスなのです。支持があれば、俳優は映画で活躍し、会社はお金を儲けるチャンスがあります。

スポーツという観点での武術は武術のごく一部です。オリンピックの正式種目にしようとしている人もいますが、これはスポーツという側面だけのことです。武術全体を表すものではありません。僕が思うに、武術には4つの側面があります。一つはオリンピック等のスポーツ、一つは自己防衛。この側面では、武術を学ぶ人はボディーガードや、保安要員や警察、兵士でしょう。異なった力です。三つ目は健康のためです。太極拳などを学ぶことです。これは健康のためだけです。四つ目は、映画やテレビといった娯楽産業のためです。武術でさえ4つの側面があるのです。

Q:あなたはどんな練習をしているのですか。

A: 毎日のトレーニングは、いくらかのエネルギーを使っていくつかの型をやるだけです。瞑想にたくさん時間をかけています。瞑想をしてそれぞれの型を理解します。それぞれの型は外的なエネルギーから来ています。外側から内側を学ぶのです。少林寺のように。肉体的な動きを使って、内的に気が巡らせます。もう一つの武術の側面は内的なものです。心の動きを自由にして気を巡らせます。身体にもこの方がいいのです。瞑想して次の段階に進むと、敵はもういません。物理的な敵は自分自身だけです。他人と戦う必要はありません。自分自身には恐れがないと確信するためにエネルギーを使う方法を学ぶのです。そうすれば自分の目標が分かります。欲や怒りをどうコントロールするのか、どう止めるのか。否定的なものを肯定的なものに変えるのです。そして人を助けるのです。僕は今の年齢になって、そのような面により焦点を置くようになりました。

Q:弟子はいますか。

A: いません。

Q:弟子をとりたいと思ったことはありますか。

A: いいえ、僕はよいコーチでも監督でもありません。僕は映画を通して武術のようなものを普及することは得意だと思います。映画で知ったら、その後は違うコーチを見つけて、異なったスタイルを学んでください。武術の4つの側面ですが、どれを学ぶにしても自分で選んでください。そこから先は僕の仕事ではありません。投資家のように。その世界を見せるだけです。教えたりはしません。そう思っています。映画を作ってもっと多くの人に伝えているのですから。

Q:今はどんなことに感銘をうけますか。

A: 僕個人の人生においては、終わったと思います。

Q:え?

A: 僕個人の生活では、この40年で僕はもう終了したと思っています。

Q:本当ですか。

A: はい。僕は武術をやります。映画を通して、武術という素晴らしいスポーツがあるということを世界に伝えたいと思っています。宗教や文化が違っても、健康な体は必要です。健康が必要です。だから僕は映画で武術を紹介してきました。そして自分が成功をおさめたことを証明しようとし、異なった映画を作りました。有名になってお金も儲けました。家族の面倒をみてきました。いったい終わりはどこにあるんでしょう。一生を通して何のために働き続けているんでしょうか。

だから今仏教を学んでいるのです。終わりが見えないからです。いつだって自分より有名な人がおり、自分より権力のある人がいて、自分よりお金を儲ける人がいます。一日中彼らの後を追いかけて死んでいくんです。死ぬ前に、「もっといい仕事ができるのに」と、まだ言っているかもしれません。何かを欲しているんです。しかし今、僕には家族と人生があり、仏教があります。40年生きてきて、自分のためにやることは何もありません。僕は学んで人を助けたいのです。

人生を語る場が必要なので、まだ映画は撮ります。映画を撮らなければだれも僕の話を聞かなくなるでしょう。働き続けなければなりませんが、それが一番大事なことではありません。私が残すものへの愛を彼らに与えたいのです。若い人達に人生を理解し、ぼくのメッセージを共有してほしいのです。それが僕の目標だと思っています。

Q:今から10年後のあなたはどうなっているでしょう。

A: 僕はゆとりを持とうと考えています。映画には僕の人生のエネルギーの半分を使うつもりです。仏教をもっと学んで、もっと慈善事業を行いたいのです。

Q:どのような仏教を学んでいるのですか。

A: 実はあらゆる仏教を学んでいます。20人以上の師がいます。主にチベット仏教です。しかし少林寺のような禅仏教も学んでいます。この二つに違いはありません。武術に様々なスタイルがあるように、外側をみれば違いますが、内側は同じです。型は意味がありません。型は心の中からくるのです。

Q:以前に、あなたが仏教徒として、そしてベジタリアンとして育てられましたが、呉彬氏がトレーニングのためにあなたに肉を食べさせたと聞きました。あなたにとっての仏教的背景をお話ください。

A: 武術を習っている間に、肉体的にも精神的な面でも、陰と陽を理解したと思います。世界を理解するのです。男と女、従業員と上司、父親、子供の関係です。どんな人もその人なりの意見を持っています。国でさえ、文化が違うのです。何が正しくて何が間違っているのか、という観点でものを見ます。ある国は自分たちが正しいことを行っていると考え、また別の国はそれを間違っていると言います。陰と陽を通せば、世界がもっと分かるのです。

10年前、仏教を学び始めました。ものの見方をもてばもっと理解ができるのです。あらゆることを陰と陽の観点から見るのです。でもそれは正しいのか間違っているのか、という観点ではありません。何が正しくて何が間違っているのかを決める必要はありません。異なっているだけです。陰と陽を理解した後に、無極に達します。無です。無では、宇宙は空です。すべてが自然なのです。人は意見を出します。だからといって、それは正しいというわけではありません。分かりますか?説明するのは難しいのですが。最大の敵は自分自身だと思っています。「SPIRIT」の中でも語っています。人はたくさんのことを恐れ、気を揉みます。また多くの事に希望を持ちます。あらゆることで気持ちを乱し、苦しみます。どうやったらその状況は終わるのでしょうか。否定的なことをどうやって毎日肯定的にしていったらいいのでしょうか。人を助ければ、幸せになれます。人生が理解できるのです。

Q:仏教徒して、あなたのデビュー作「少林寺」が実際の少林寺を再建するきっかけとなったことは嬉しかったでしょうね。

A: あの頃は文化大革命の後で、1960年代から70年代にかけて宗教活動は国中で停滞していました。少林寺には料理人が1人、住職が一人、もう一人寺男がいただけでした。彼らが門を開けてくれました。色々な部屋を見ましたが、この時点では僕は仏教徒ではありませんでした。

おそらく、業が僕にあの作品を作る責任を負わせたのでしょう。それ以来、少林寺を年間何百万人の人が訪れ、それを知って僕はたいへん嬉しかったです。今ではたいへん人気のある場所です。でも同時に、肉体的な面に、より焦点が当てられるようになったことに危惧を感じます。いったい何人の人が哲学を、真の仏教哲学を学ぶことを真剣に考えているでしょうか。多くの若者がこの映画を見て、少林寺を訪れ、武術を学び、有名になり、カンフーを披露したいと考えているようです。肉体的な面のみに目を向けてほしくはありません。

Q:武術の訓練と仏教の修行はどう関連しているのですか。

A: 武術は人を陰陽に導いてくれます。しかし、陰陽を理解するのは大変難しいことなのです。中国では、よく、アメリカのなになには嫌いだ、とかアメリカは中国のなになにが嫌いだ、と言います。どちらかの立場をとらなくてはなりません。どちらの立場がいいのでしょうか。陰でしょうか、あるいは陽でしょうか。でも、陰と陽の両方にまたがろうとすると、たいへんなエネルギーがいるのです。それは武術という観点からは得られません。

多くの卑劣な武術家を見てきました。あまりにも本来の姿からはかけ離れた人達です。名声や、権力を欲しがったり、例えば、日本の武術が最高だ、と言いたがったり。あるいは、中国の武術が最高だ、と言いたがったり。少林武術がなによりも優れている、という人もいます。あるコーチは太極拳が何よりも優れている、と言います。ですから、このような人達は、世界をただ一点から見ているのが分かると思います。従って、心の底から陰と陽を理解している武術家はあまり多くありません。「陰と陽を理解すれば、無に達する。」と口では言っても、まだ権力やお金を求めている武術家さえいます。だから僕は仏教を勉強しているのです。仏教によって、より理解が深まります。無の境地、幸福に達するのです。

Q:虎爪基金(the Tiger Claw Foundation)はあなたの慈善基金、ワン・ファウンデーションに貢献する最初のアメリカの団体となりましたが、進捗状況はいかがですか。

A: ああ、そうです!ありがとうございます!今のところ、ワン・ファウンデーションは香港とアメリカにしかありませんが、中国でも始めたいと思っていますので、中国政府には申請書を送っています。3年前、2003年の中国では、28万人が自殺をしているんです。2004年は25万人でした。つまり毎年、平均して毎年25万人が自殺をしていることになります。仏教徒として僕は心の痛みを感じます。何故だろうと思います。中国の経済は年々拡大していくのに、人々の命は以前よりも軽くなりました。なぜそんなに多くの人が自殺するのでしょうか。

それで僕は「SPIRIT」を作ったのです。この作品には、僕の心の底からのメッセージがあります。それは、「どの時代に生まれてくるのかを選ぶことはできないが、終末に向かう勇気はある。」ということです。僕の人生経験を分けあいたいのです。「大統領も、スターも、だれでも人生には辛いときがある。」順風満帆な時ばかりではありません。人気もあり、お金も稼ぎ、有名になり、何もかもが幸せ、などということはありません。だから僕は映画を通して僕の体験を分かち合い、「自分を大事に、人生を理解しなさい。」と言いたいのです。

僕はエネルギーをつぎ込みました。たくさんの大学を訪れ、学生達に話しかけました。中国政府がワン・ファウンデーションの設立を認めてくれることを、僕は本当に望んでいます。急がねばなりません。中国では、ジェット・リーがやっていることを理解してもらえます。アメリカでは、僕は映画産業の一部として受け入れられているだけで、あまり多くの人に知られてはいません。でも、中国ではみんながジェット・リーを知っています。何かをやりたいと思えば、主要なメディア、新聞、雑誌、テレビが支えてくれます。みんなにかかわってもらいたいのです。

「SPIRIT」を制作する際に、僕は自殺しようとしている人に語りかけたいと思っていたのです。多くの人は物事の一面しかみていません。陰だけ、あるいは陽だけです。人気のある人、有名でお金のある人がたくさんいますが、裏側を見ることはなかなかできません。彼らは孤独で、重いプレッシャーを感じています。苦しんでいます。それがもう一つの面です。そこを理解する必要があります。そこから良いことを学ばなければなりません。同時に、否定的な面も知らなければなりません。「有名になって、権力やお金を得たいだけで、責任は負いたくない。」とは言えないのです。それでは生きる、とは言えないのです。人生の半面のみを生きているだけです。

だれでも問題を抱えています。何かをしたいけれどお金がないのかもしれません。年月を経る過程で、同じようなことを体験します。家が買いたい。でもお金がない。車を買いたい。でもお金が十分にない。同じ事です。ほしい物が大きくなっていくだけです。サイズが大きくなったり、でも満たされない気持ちは何も変わっていないのです。分かりますか?

Q:しかし、あなたは全てのものを手に入れましたよね。国際的スターの座を得ましたよ。

A: おわかり頂きたいのは次のようなことです。僕は子供の頃アイスクリームが好きでした。それが僕の望みでした。アイスクリームを手に入れるために色々とがんばりました。後に、自転車がほしくなります。それから、他に何か、また他に何か、とどんどんほしくなります。(笑)ほしい物が大きくなっても、何かがほしいという気持ちは同じです。大きな物や大きな権力や大金を持った人が幸せだ、というわけではありません。幸せは心の中からわき出るものです。トロフィーをもらった時のようなものです、金持ちであろうがなかろうが、年をとっていようが若かろうが、人は幸せを感じます。幸運であるとかゾクゾクするとか、どんな言い方をするにしても。分かりますか?オリンピックで自国の選手が金メダルを獲ると、大統領であろうがホームレスであろうが、うれしく感じます。みんなが幸せを感じます。感情は同じです。うれしいんです。お金のあるないは関係ありません。

お金があって権力があれば幸せだとみんなは考えますが、それだけが幸福だとは僕は思いません。お金は幸せをもたらすこともありますが、それはわずかな間だけです。欲が出ます。もっと大きなものがほしくなります。持っている車が小さければ、大きな車がほしくなります。どんどん、ほしくてたまらなくなるのです。しかし、物質的なものは本当の幸福を与えてはくれません。だからすべては物事の見方ひとつなのです。自分自身の中の大きな敵と戦いなさい。自分の内側をコントロールできれば、本当の幸福が見つかります。僕の言っていることが分かりますか?人生を通して、僕は以上のようなことが分かったのです。

Q:Kung Fu Tai Chi(雑誌)の読者にアドバイスをお願いします。

A: 一番大切な敵は自分自身です。自分自身と戦ってください。そこから学んでください。自分自身とともに生きてください。否定的なエネルギーを肯定的に変えてください。外敵に対処するのはたやすいのです。最も大事なのは内側です。